肩こりの原因は本当に「肩」だけ?

肩こりは、日本人の国民病ともいわれるほど多くの人が悩まされている不調です。「マッサージしてもその場しのぎ」「デスクワークでまたすぐに凝ってしまう」――そんな経験はありませんか?

実は肩こりの原因は、必ずしも「肩」そのものにあるわけではありません。意外な部位が隠れた原因になっていることがあります。そのひとつが胸鎖関節(きょうさかんせつ)です。あまり聞き慣れない関節ですが、ここが固くなることで肩や首に大きな影響を与え、慢性的な肩こりにつながることがあります。


胸鎖関節とはどんな関節?

胸鎖関節は、胸の中央にある胸骨と鎖骨をつなぐ関節で、鎖骨の内側端(首の付け根あたり)に位置します。この小さな関節は、実は上半身の動きを支える“要”のような存在で、次のような動きに深く関与します。

  • 肩を上げる・下げる
  • 腕を前後・左右に動かす
  • 首を回す・傾ける
胸鎖関節の位置(胸骨と鎖骨の接合部)
図:胸鎖関節の位置(胸骨と鎖骨の接合部)

普段は意識しづらい関節ですが、ここが硬くなると肩の動きが制限され、肩周りの筋肉に余計な負担がかかってしまいます。

胸鎖関節が硬くなると肩こりになる理由

  1. 動きの制限:肩甲骨や首の可動域が狭くなり、ちょっとした動作でも筋肉が疲れやすくなる。
  2. 姿勢の崩れ:胸が閉じて「巻き肩」「猫背」になりやすく、肩・首の筋肉が常に緊張状態に。
  3. 呼吸が浅くなる:胸郭の動きが小さくなり、酸素の供給が減る。結果として血流も滞り、コリが抜けにくい。
  4. 血流・リンパの停滞:肩周りに老廃物がたまり、疲労感やだるさが長引く。
猫背・巻き肩と良姿勢の比較イラスト
図:猫背・巻き肩と良姿勢の比較

つまり胸鎖関節が固まっていると、肩そのものをいくらマッサージしても根本的な改善につながりにくいのです。

セルフケアで胸鎖関節をゆるめる方法

自宅でできるやさしいケアを紹介します。痛みが強い場合やしびれがある場合は、無理をせず専門家にご相談ください。

1. 鎖骨まわりのストレッチ

  • 両手を腰に当て、胸を大きく開くように肩をゆっくり後ろへ引く。
  • 呼吸は止めず、20〜30秒キープを2〜3セット。
  • 鎖骨から胸の前面がじんわり伸びる感覚を意識。

2. 鎖骨回し(やさしい自己マッサージ)

  • 鎖骨の内側(胸骨のすぐ外側)に指を軽く当てる。
  • 痛くない圧で小さく円を描くように、左右各30秒ほど。
  • 皮膚を強くこすらず、表層を揺らすイメージで。

3. ゴムバンド(ゴムチューブ)のタスキ巻き(女性は中2m推奨)

  • ゴムバンドを背中で「たすき掛け」にして胸の前で交差。
  • 軽く引き合いながら肩を開くように、ゆっくり10〜15回。
  • 女性や力が弱い方は中サイズ2mが扱いやすい。
写真:ゴムバンドのタスキ巻き(基本姿勢)

4. 骨盤巻きの併用(男性は大2m推奨)

  • ゴムバンドを骨盤に一周巻いて体幹を安定。
  • 肩(タスキ)+骨盤巻きを同時に行うと、姿勢が整い負担分散に。
  • 男性や体格の大きい方は大サイズ2mが目安。
ゴムバンドの骨盤巻きの巻き方
写真:ゴムバンドの骨盤巻き
注意:痛みやしびれが出る動きは中止してください。既往症のある方、妊娠中の方は事前に専門家へご相談ください。

まとめ

胸鎖関節は小さな関節ですが、肩こりの原因として見落とされがちな重要ポイントです。毎日の軽いストレッチやゴムバンドを活用したケアで関節をゆるめ、姿勢や呼吸を整えることで、肩こりの予防・改善が期待できます。